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 中国は南京事件の資料をユネスコ(国連教育科学文化機関)の記憶遺産に登録するよう申請したという。六月十日の定例会見で中国外務省の報道官が明らかにした。
 このため平成十一年から資料の選定を始めており、今年二月十一日には南京市公文書館が百八十三点の資料を公開し、三月まで申請したという。
 南京事件に関しては、平成十六年に南京虐殺記念館をユネスコ世界文化遺産にという話が起き、これは数年にして消えた。今年二月に南京市公文書館が資料を公開して記憶遺産にと言ったとき、世界文化遺産と同じような単なるいやがらせと考えられたが、そうではなかったのだ。
 同じ二月、全人代は十二月十三日を南京事件犠牲者への追悼の日とすることを決め、翌三月二十日には習近平国家主席がドイツで南京事件を批判、四月二十七日になると中国を訪れたデンマーク女王を南京虐殺記念館に案内、五月二十九日には中華全国帰国華僑連合会が日本軍犯罪の史料収集を呼びかけ今年の十二月十三日にその展示会を開催すると述べていた。これまでとは違う姿勢を中国は見せており、本気だったのだ。
 今後、ユネスコの事務的な審査と記憶遺産国際諮問委員会の審査が行われ、最終的にユネスコ事務局長が判断し、来年夏、登録されるかどうか決まる。
 問題は登録されるかどうかだ。
 中国に提出された資料は、南京虐殺記念館が選定したもので、当時の日記や写真、映画フィルム、南京軍事法廷の記録文書など十一点であるという。
それからすると、南京虐殺記念館に展示されている資料であるらしく、どういうものか推測がつく。
 当時の日記といっても、兵士の日記の場合、東史郎日記のようにあとで清書されたものがある。南京にいた第三国人の日記もあるが、風聞を記したものは虐殺を示しているが、実際に見て記したものは散発的な不法行為だけである。写真はどうかといえば、馬賊の写真が南京のものとされたり、説明文が恣意的に加えられ虐殺があったとされた。日時と場所がはっきりしていれば、どの戦場にもあるような写真で、虐殺を証明するものはない。映画フィルムというのはマギー牧師の撮影したフィルムであるが、それは、当時、写真週刊誌「ライフ」にも掲載されており、虐殺とほど遠い。
 中国政府は関東軍憲兵隊の資料など新たな資料もあると主張しているが、事件は事実無根であるから、関東軍憲兵隊に証拠だてるような資料があるはずはない。
登録を認めるひとつの基準が真正性とされており、もしその通りなら、申請が認められることはないであろう。
 しかし、といって安心しているわけにはいかない。
 ユネスコに審査の過程を公開する義務はなく、日本政府が南京事件を認めているからである。
 申請の発表があった十日、早速、菅義偉官房長官は記者会見で取り下げるよう申し入れると話し、実際、取り下げるよう求めたが、菅官房長官の抗議は、
「中国が政治的に利用し、日中間の過去の一時期における負の遺産をいたずらに強調することは極めて遺憾だ」
と事件を認めたうえでの抗議にすぎない。
 翌十一日、中国外務省の報道官は絶対取りけさないと述べた。
 日本政府が認め、中国があったと言って申請していることからすれば、認められる可能性はある。
 仮に申請が認められたらどうなるか。
 中国は申請の目的を、
「非人道的かつ人権を侵害する犯罪行為が、繰り返されることを防ぐため」
と述べており、日本人は非人道的な犯罪行為をする民族だという中国の非難が続くことになる。
 これまでの姿勢を正し迅速な対応を取ることが外務省に求められる。
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