昨秋、朝日新聞が吉田清治証言を否定したことから慰安婦強制連行説が崩れた。強制連行説と同じように朝日新聞が主張し続けてきたことに南京事件がある。本多勝一記者が報じた「中国の旅」を根拠として強引に主張しているものだが、「中国の旅」はウソで塗り固められたものである。昭和四十六年に報じられて以来、そのことが指摘され、やまない指摘に対してとうとう本多勝一は平成二年に「問題があるとすれば中国自体ではありませんか」と居直った。といって朝日新聞が「中国の旅」を取り消したわけでない。
このようなことから、いまこそ「中国の旅」を取り消させるべきだとの声が論壇から上がっていたが、スカパーからもそんな声が上がった。「DHCシアタ-」(スカパー!プレミアムサービス547チャンネル)の討論番組「そのまま言うよ! やらまいか」が「2015年を『南京事件』見直し元年に」と宣言したのである。
番組「そのまま言うよ! やらまいか」は、元文藝春秋編集長の堤尭氏が司会となり、「週刊新潮」に「変見自在」を連載している高山正之氏や、軍事評論家の志方俊之氏たちが、新聞や雑誌が正面から取りあげることのないテーマに毎回斬り込むというものである。番組そのものが人気あるのだが、司会を務める堤尭氏の歯に衣着せぬ言い方も人気の一因である。「2015年を『南京事件』見直し元年に」と言うだけに、一年を通して南京事件を追いつづける予定で、一回目では「百人斬り競争」を取りあげた。
「百人斬り競争」とは、日本軍が南京を目指している昭和十二年十一月の「毎日新聞」に載った記事のことで、どちらが早く敵兵百人を斬るか,二人の将校が競争しているというものである。しかし、二人の将校は後方の勤務でまわりに敵兵はいない。日本刀はうまく斬っても数人である。記事は戦意高揚の創作だったのだが、これがもとで二人の将校は戦後南京で銃殺刑に処されている。
「中国の旅」はこれを昭和四十六年に殺人競争として報じた。創作記事をさらに歪曲したのである。
平成十五年になり、二人の将校の遺族が朝日新聞社、本多勝一記者、毎日新聞社を、記事によって追慕の念が損なわれたと訴えたが、百人斬り競争は百パーセント虚偽だといえないという理由で訴えは認められなかった。
昨冬、二人の将校のうちの向井敏明少尉の次女千恵子さんが亡くなり、今年一月二十八日、追悼会が開かれた。向井千恵子さんはなんとしても父親の汚名を晴らそうと思いつづけ、平成十五年の訴訟に漕ぎつける原動力となった人である。追悼会は平日の午後であったが、六十人もの参会者があり、朝日新聞社と本多勝一記者と「中国の旅」をこのままにしては二人の将校と向井千恵子さんが浮かばれないという声が上がった。
最初に記事にした毎日新聞の浅海一男記者は、二人の将校が中国に連れていかれて裁判になったとき、二人が斬る場面を見たことがないと言ったものの、創作記事とは証言しなかった。そして毎日新聞を定年退職すると中国に渡ってしまう。高山正之氏が何年か前に中国に行き北京にある日本向け土産屋に入ると、その店を浅海記者の娘が経営していることを知る。中国は権利を浅海記者の遺族に与えているのである。
番組では追悼会の様子や高山正之氏の体験も話され、これから一年間番組がどう展開するのか、期待を持たせる内容となっている。
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