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 南京事件があったとされてから今年で七十六年目になる。十二月二十三日、新しい南京本が発売された。『謎解き「南京事件」』である(阿羅健一著、PHP研究所刊、千五百円)。
 これまで南京事件は、戦時宣伝という見方から研究が進み、中華民国による宣伝であって事実無根であると明らかにされてきたが、新しく発売される本は、東京裁判が下した判決を分析することによって、南京事件が架空であったことを改めて明らかにしたものである。
東京裁判は昭和二十三年十一月に判決を下したが、日本軍によって引き起こされた不法行為として次の八つをあげた。
一 最初の二、三日で一万二千人の市民を殺害した
二 二万人の女性を強姦した
三 南京で欲しいものをなんでも奪った
四 南京市街の三分の一を焼き払った
五 兵役年齢の二万人の男性を城外で殺害した
六 南京郊外で五万七千の一般人を殺害した
七 三万人の中国兵を揚子江で殺害した
八 一般人と捕虜の殺害数は二十万人以上に達した
 七つの不法行為を起こし、結果として二十万人以上を殺害したと判決した。
『謎解き「南京事件」』は、これらすべてを俎上にのせ、一つ一つに反論し、その結果、検察の立証は事実に基づいたものでなく、判決は検察の主張を一方的に認めただけ、と明らかにした。
 詳しくは本書を読んでもらうことにして、検察の主張がどのようにでたらめで、どのように崩れたか、ここでは二番目にあげられた二万人の強姦について紹介する。
 検察がこれを立証するとき、南京国際委員会の委員長ラーベが自国の領事に宛てた電報を証拠として提出した。そこには、ひと月のあいだに南京で二万人の強姦があったと思う、と書いてあった。なにを根拠にラーベがそう思ったか明らかにされてないが、検察が証拠としてあげたのはそれだけである。
 もしそれが事実だとすると、南京では性病が多発したり、中絶手術が行われたり、たくさんの私生児が生まれたことになる。
 実際はどうだったのか。
 当時、南京で開業していたのは鼓楼病院だけで、そこに勤務していたウイルソン医師は東京裁判で証言しているが、ウイルソン医師が証言したのは負傷した男性についてのもので、性病についてはわずか一件だけだった。
 南京の戦闘が一段落すると、日本から医師たちがやってくる。その医師団が行ったのは流行病の予防接種で、性病の治療は行っていない。日本の軍医も協力したが、彼たちが行っていたのも流行病の予防だ。つまり、性病の治療はほとんど行われなかったのである。
 また、鼓楼病院は中絶手術をしなかったという。
 それでは、翌年の十月になって赤ちゃんが何人も生まれたかというと、当時の人口統計が残されていて、それによると、十月になったからといって特に増えもせず、また社会施設が引き受けた私生児の記録も残っているが、私生児が増えたこともない。
 このようにさまざまな記録が強姦のあったことを否定している。
 しかし、検察が主張する通り、二万人が強姦された、と判決された。
二万人の強姦という判決は検察が提出した証拠や当時の記録で簡単に崩れるが、ほかの七つも当時の記録などによって崩れてしまう。
 この本は、東京裁判の判決を否定しているだけでなく、中華民国がなぜ事件を持ち出し、アメリカの宣教師がそれに協力した経緯も明らかにしている。
 四六版で二百数十頁の本なので、簡単に読める。外務省、文科省などがこぞって事件を認めているいま、私たち一人一人が事件についての正確な知識を身につけ、歴史を正していく必要がある。それにピッタリの本と言えよう。
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