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BSフジの「南京事件論争」、勝ったのは誰?

十一月十二日、BSフジ「プライムニュース」が南京事件を取りあげた。南京事件はあったのかなかったのか、あったとしたらどの程度の規模だったのか、さらにユネスコの世界遺産登録にどう対処すべきか、という点にしぼって研究家による論争が行われた。出席者は、事件はなかったとする拓殖大学客員教授の藤岡信勝氏、四万人の虐殺が行われたとする元千葉大学教授秦郁彦氏、十数万の虐殺があったとする明治大学教授の山田朗氏の三人で、午後八時から十時まで二時間続き、一致点が見出せたわけではなかったが、見ごたえのあるものとなった。

全般的に見れば藤岡信勝氏が視聴者の同意を得ただろう。ほかの二人が局部にこだわり、自分の主張に終始したのに対し、藤岡信勝氏は自分の見解を述べながら、二人の見解にできるかぎりの反論をしたからである。また、秦郁彦氏が感情を露わにする場面や、虐殺があったとする秦郁彦氏と山田朗氏がすりよる場面が見られ、それらも二人が確固とした根拠を持っていなかったのではないかという印象を視聴者に与えた。すでに南京事件に関しては数十種の本が刊行され、研究者でなくとも詳細な数字などを把握している。秦郁彦氏と山田朗氏の二人は視聴者を説得しきれなかったのではないか。

二人は決定的な過ちも露呈した。

山田朗氏は、何人が南京に残ったかという司会者の質問に、もともとの人口を百三十五万人とし、八十万人が避難したので六十万人ほどが残ったと答えた。二十万人しかいない南京で三十万人を殺すことができるかという反論に対し、虐殺を主張する人の間で考えられたのが場所や期間を広げる方法で、人口を増やすのもその一つである。六十万人が残ったから三十万を殺害しても数十万人は残るという計算だ。藤岡信勝氏が南京の警察長官は南京に残っていた市民を二十万と見なしていたと発言するに及んで山田氏に対する信用は消し飛んだ。

十一万余を埋葬した崇善堂を証拠として出していることも視聴者の失笑を買っただろう。崇善堂は埋葬など全く行っておらず、その埋葬記録は中国側が捏造していたもので、そういったものにいまだすがっている。

秦郁彦氏にも同様な発言が相次いだ。

秦氏はイギリスの記者テンパーレーが虐殺を本にしていることを事件の証拠として挙げたが、テンパーレーは国民党の資金援助で宣伝につき、中国が設立した通信社の責任者になっていた。宣伝ブローカーだったわけだが、そういう人物やその著書を堂々と挙げていることは、最近の研究をまったく知らないか、知っていてもほかに事件の根拠がなくて挙げざるをえなかったからであろう。

また松井石根軍司令官が部下を集めて叱ったことも事件があった根拠として挙げているが、松井軍司令官は十件か二十件の事件を知って叱ったのであり、それほど軍紀に厳しかった。叱ったことはむしろ事件がなかったことの証拠である。松井軍司令官が叱ったことを挙げて虐殺があったとしたのは東京裁判の検事であったが、秦はそれを改めてなぞっている。

二人は噂のたぐいのものも挙げており、三者三様の見解が示されたものの、事件がなかったことを視聴者は確信したのではないだろうか。

笠原十九司氏など虐殺派といわれてきた人が出席せず、まったく知られていなかった山田朗氏が出席したのは、虐殺論の破綻が目に見えていたからかもしれない。

1 thoughts on “BSフジの「南京事件論争」、勝ったのは誰?

  1. 山本圭一

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    貴方は南京の知識があるからそう主張するだろうが、藤岡信勝の主張は根拠を示さず、史料もロクに提示せずに、幕府山の捕虜暴動の処刑についても「戦闘中だ」と言い張っている。どう考えても藤岡氏の主張は甘いし、秦郁彦氏が完全に一歩リードしている。ひいきにもほどがある。

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